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亜熱帯の海。その再現が大自然の驚異と環境保全の大切さを教えている。
【沖縄美ら海水族館】
 
 まさに美ら海(ちゅらうみー美しい海)の中へ。

黒潮に育まれた沖縄の海。そこは世界有数の亜熱帯特有生物が生息する神秘の海であり、人の想像をはるかに超えた生命の営みが繰り広げられている。こうした沖縄の海をサンゴ礁から水深1000m付近の深海まで、まるごと再現した[沖縄美ら海水族館]。光、水質、透明度を可能な限り自然の状態を保ち多彩な海の生物を展示している。特に圧巻なのは全長約7.9mのジンベエザメとマンタ(オニイトマキエイ)が悠然と泳ぐ姿。この水槽の展示窓は高さ8.2m、幅22.5m、厚さ60cmの大アクリルパネル。水族館展示窓世界一としてギネスブックに登録されている。さらに、ジンベエザメの繁殖を目指した複数飼育は世界初の試みであると言う。仰ぎ見るその雄大な姿、美しい海の中にいる思いがする。
1階から4階まで「深海への旅」「黒潮への旅」「サンゴ礁への旅」「大海への誘い」のテーマごとに分かれており「ウミガメ館」「マナティ館」「イルカラグーン」などもあり多彩な海の生き物たちが見られる。訪れた日は平日にもかかわらず多くの人達で賑っていた。「沖縄美ら海水族館」は、沖縄県北部、本部町の海洋博公園内にある。
 


●美しい亜熱帯の海の中へ〔沖縄美ら海水族館〕
撮影協力:沖縄美ら海水族館

ウミガメが伝える海の環境問題。
 陸の影響を受けるウミガメ。

美ら海水族館の「ウミガメ館」を訪ねた。ゆったりと泳ぐ姿、大きな体ではあるが顔は可愛らしい。ウミガメを担当している海獣課の前田好美さんに話しを聞いた。
世界には8種類のウミガメが生息している。「ウミガメ館ではアカウミガメ、アオウミガメ、タイマイ、ヒメウミガメ、クロウミガメの5種を飼育しています。ウミガメ館には産卵のための産卵場もあり、ここで生まれた卵を孵化させ1年間飼育してから7月頃に放流しています。今年(2007年)は120匹を放流しました。」
ウミガメと海の環境問題との結びつきについて「ウミガメは海に生息していますが、産卵や孵化の場は砂浜です。それだけに陸にいる人間の対応が大切になります。」砂浜で産卵し孵化するウミガメにとって海だけではなく陸の環境保全も重要であると言う。
  ●沖縄美ら海水族館/ウミガメを担当している海獣課の 前田 好美さん

●砂浜で産卵孵化するウミガメにとって陸の環境は重要
撮影協力:沖縄美ら海水族館

 厳しい食物連鎖の中にいるウミガメ。

「ウミガメの産卵時期は4月から10月にかけて、シーズン中一頭が数回上陸して卵を産みます。沖縄本島では特に北部で多くの産卵が見られます。ウミガメ一頭が産む卵は約120個程ですが、卵が孵化しても全てが育つわけではありません。孵化して海まで行く途中で鳥、カニ、蛇などに食べられてしまい、海に出ても今度は大きな魚に食べられてしまうからです。」ウミガメは厳しい食物連鎖の中にいる。

 ウミガメの産卵と孵化を妨げるゴミ。

ウミガメにとってもう一つの大敵にゴミが上げられる。「ウミガメが産卵のため砂を掘っているとゴミが出てくる場合があります。それが障害となり産卵を途中で止めてしまう事があります。」さらに孵化してからもゴミの影響を受ける事があると前田さんは言う。「孵化するのに2ヶ月ほどかかりますが、こんな事もありました。卵を産んだ所にゴミが捨てられ、孵化した仔ガメたちが外へ出られなくなったのです。浜に遊びに来ていた人が知らせてくれましたが、私たちが保護しに行きました。」
産卵や孵化の障害はゴミだけではないと言う。「孵化したばかりの仔ガメは明るいところへ行く習性がありますが、夜、浜の近くに強い明かりがあるとそちらに行ってしまう事があります。こうした時も浜に来た人に教えてもらい保護に向かいました。」浜に来た人と前田さんたちの連携によって救われるウミガメもいる。
前田さんはゴミについて「ウミガメを守るために人ができる身近な活動の一つはゴミを捨てないことです。」と、言う。

 

 
●ウミガメの産卵の様子
写真提供:沖縄美ら海水族館

 ウミガメの事をもっと子供たちに伝えたい。

前田さんは「地元の子供たちでも自然の中でのウミガメや仔ガメを見たことがない子たちが多いですね。」ウミガメとウミガメを取り巻く環境に関心を持ってもらいたいと沖縄美ら海水族館では、毎年ウミガメの放流会を行っている。「今年(2007年)も全国から参加者を公募し放流会を行いました。これからも地元の子供達はもちろん、本州の子供たちにもウミガメのことを知ってもらうために活動したいと思っています。」子供達はこうした事を通じて自然を守る大切さを学んでいく。

  ●ウミガメ放流会の様子
写真提供:沖縄美ら海水族館

目の前に広がるサンゴ礁の大自然。
 70種、800群体のサンゴが繰り広げるサンゴ礁の生態。

美ら海水族館には「サンゴの海」水槽がある。自然光を充分に取り入れた、大きな水槽に生きたサンゴが展示されている。ここには、約70種、800群体のサンゴがあるが、ほとんどが10年以上かけて育てられたものである。太陽光と新鮮な海水を取り入れた水槽での生きたサンゴの大規模な飼育は世界初の試みであるという。サンゴ礁に生息する様々な魚たちも泳ぎ、横に広がる緩やかな曲線のパノラマにサンゴ礁の大自然が美しく展開されている。
沖縄美ら海水族館/深海系(サンゴ専門)・教育普及係長の野中正法さんに話を聞いた。「多くの人に海に興味を持ってもらうことが水族館の役割ですから、ここでは実際に自分の眼で海の中を見てもらい、サンゴへの理解と海の自然を知ってもらいたいと思っています。」サンゴ礁には穏やかな海と波の激しい海の所があるが、この水槽のサンゴ礁は穏やかな海の再現であり、サンゴたちが静かな海で育っている。
  ●沖縄美ら海水族館/深海系(サンゴ専門)・教育普及係長
野中 正法さん


●サンゴ礁の大自然を忠実に再現
撮影協力:沖縄美ら海水族館

 海について知らないことはまだ多い。

自然のままの環境で育っているサンゴは水槽内で放卵・放精も見られる。野中さんは「サンゴの放卵は6月頃の夜で、一般のお客さんにも見てもらいたいのですが、いつ放卵するか分からないし、しかも夜なので残念ですが今のところ公開はしていません。」
海の研究について「サンゴの被覆面積や種類の変化は、平成元年から継続して観察や記録を行っています。それで分かるのは様々な理由でサンゴが増減したり、種類が入れ替わったりしている事実です。人間が海に潜って、海洋生物の観察が出来るようになったのは、40年から50年くらいの前のことで、まだまだわからないことだらけです。例えば、オニヒトデが大発生して何もなくなった所には、よく調べてみると様々な種類のサンゴの赤ちゃんが入ってきています。被覆面積は激減していますが、サンゴの種類数は、逆に増えていることもあるのです。オニヒトデもサンゴ礁生態系の一員として、重要な仕事をしているのです。」海について知らないことはまだまだ多いという野中さん。それだけ海は多彩な仕組みで出来ている、ということであろう。海の環境は陸の環境にも大きく影響する。これからも研究は重要課題である。

 イルカの胃に衝撃。

美ら海水族館の出口近くに解剖されたイルカの胃が展示されている。展示パネルには「平成19年10月19日、弱ったマダライルカが那覇の港に迷い込んできたところを保護されたが2日後に死んだ。解剖の結果、胃の中には消化できないプラスチックやビニール袋などが入っていた」と書かれている。解剖された胃がそのまま展示されているのだ。その現実にかなり衝撃を受ける。
ウミガメ担当の前田さんが言っていた「ゴミを捨てない・・・」の言葉が重くのしかかる。


■沖縄美ら海水族館はこちらを
http://www.kaiyouhaku.com/
  ●那覇の港に迷い込んだマダライルカの胃の中
撮影協力:沖縄美ら海水族館
 
 
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