特集

アルミニウムと温泉

アルミイオンを多く含有する塚原温泉を訪ねる

アルミニウムを含有する温泉は、北海道から九州まで数多く点在している。1番多くアルミニウムイオンを含有しているのは北海道の恵山温泉だと言われているが、今回は2番目にアルミニウムイオンを含有するという、大分県由布市の塚原温泉を訪ねることにした。塚原温泉はアルミイオンの他にも、酸性度の高さ、鉄イオン含有量の多さも日本屈指であり、日本3大薬湯の一つとして全国的に知られている。塚原温泉の源泉は、伽藍岳(がらんだけ)といわれる活火山の中腹、標高約800メートルの地点にあり、平安時代末期の武将源為朝が山で狩りをしていた時、傷ついた鹿が湯溜まりに浸かって傷を癒すのを見て発見したと伝えられている。やや黄緑がかった温泉で、pH1.4という強い酸性のため、浴槽はすべて木造となっている。もちろん、時計や貴金属をつけたままの入浴は避けなければならない。湯治にきていたお年寄りの一人に話を聞くと、肌がカサカサして痒くなると福岡から毎年ここに来ているのだという。自分にはとても塚原温泉が合っていると話してくれた。


伽藍岳の中腹
 
山頂付近に点在する噴気孔

特徴ある塚原温泉の泉質


大浴場
  普通の温泉は、「単純温泉」とか「ナトリウム塩化物泉」とか泉質は短いものが多いが、塚原温泉の場合は、「酸性-含硫黄・鉄・アルミニウム-カルシウム-硫酸塩泉」と長い名前がついている。非常に多くの成分を含んだ、個性的な泉質なのだ。 塚原温泉を管理している別府白土礦業株式会社の櫻井さんにアルミや鉄の含有が多い理由を尋ねると、「標高が高く地下水の供給が少ないこと、雨水が岩などの鉱物からアルミや鉄の成分を溶かしていること、地下の地獄(自然湧出の源泉)の影響といったことなどの相乗効果によるのではないか」と話してくれた。ただ、アルミニウムイオンが多いからこういう効能があるということは、はっきりしていないそうである。

「含アルミニウム泉」の定義

温泉水1kg中に含有成分(溶存物質)が1000mg以上あり、陰イオンとして硫酸イオン (SO42-)、陽イオンとしてアルミニウムイオン (AI3+)を100mg以上含有する温泉を、とくに「含アルミニウム泉」と定義してその効能が認められてきた。塚原温泉をはじめ、恵山温泉(北海道)、蔵王温泉(山形県)、玉川温泉(秋田県)、毒沢温泉(長野県)、えびの高原温泉(宮崎県)などがその代表的なものである。しかし2014年に環境省による「療養泉の基準、禁忌症・効能」の改定があり、「含アルミニウム泉」の効能と言われるものの多くが硫酸塩泉としての効果だとみなされ、療養泉から除外されることになった。

アルミニウムと温泉


中央温泉研究所専務理事
甘露寺 泰雄さん
  全国の温泉から依頼を受けて温泉の成分を分析する公益財団法人中央温泉研究所専務理事の甘露寺泰雄さんに話を聞いた。甘露寺さんによると、「含アルミニウム泉」の多くはかつて「明礬泉(含明礬・緑礬泉)」という名前で呼ばれ、長い間、慢性皮膚炎、多汗症、冷え症に効くといわれてきたという。これらは多くの文献でも紹介されている。最近でもアトピーの治療に「含アルミニウム泉」を推奨している医者は少なくないそうだ。「ステロイド系の医薬品に頼らず自分の体が本来持っている自然治癒力を助けてくれるから」だと甘露寺さんは教えてくれた。しかし、こうした「含アルミニウム泉」の効果は認めつつも、アルミニウム単独として人体にどう影響を与えているかについてははっきりした定説はないのだという。アルミニウムイオンの温泉効果については現在も研究が行われているそうなので、その結果に期待したいところである。

甘露寺さんの話に「明礬泉」という言葉がでてきた。明礬といえばアルミニウムを含む化合物である。温泉から少し離れるが、明礬とアルミニウムの関係について調べてみることにした。
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