特集

アルミニウムと温泉

明礬を通して見えてくるアルミニウムの働き

明礬は紀元前の古代ローマ時代から、止血剤や鎮痛剤などの医薬品として使われてきた。それは、明礬にタンパク質の性質を変化させて血管や汗腺などを縮める、収斂作用や殺菌作用があったからである。歴史家ヘロドトスは、明礬が世界最古の制汗デオドラントであると記している。明礬には収斂作用のほかに、ニオイ成分であるアンモニアを中和する効果もあったからである。現在でも市販されている多くのデオドラントや制汗剤に塩化アルミニウムが使われている。ちなみにアルミニウムという名前は明礬を示すラテン語アルム(Alumen)に由来している。さらに言えば、アルミニウムという金属が初めて発見されたのも明礬からである。明礬とアルミニウムはかなり近い関係にあるようだ。  
アルミニウムミョウバンの結晶

日本での明礬製造の歴史


「和漢三才図会」(1713年)に紹介された明礬
  日本でも明礬は、医薬品のほかに、火薬や染め物など多くの用途に使われてきた。現在は工場で製造されているが、江戸時代中期から明治時代にかけては、日本独特の方法で生産してきた。いちばん明礬づくりが盛んだったのは別府地方で、全国の生産量の約7割を占めていたという。江戸時代の百科事典とも言える和漢三才図会には、豊後の速見郡(現在の別府市と日出(ひじ)町、杵築市の大部分)で明礬が最も多く製造されていたことが記されている。

別府で明礬づくりが行われたのは、この地方(のちに明礬という地名になる)のいたるところで温泉の蒸気である噴気が噴き出していたからである。この噴気(硫化ガス)が、鉄やアルミニウムを含んだ青粘土の層を通過することでできた結晶が明礬の原料になった。現在この結晶は湯の花(入浴剤)として有名であり、別府を代表する特産品になっている。2006(平成18)年、湯の花の製造方法が、国の重要無形民俗文化財の指定も受け、国内外から多くの観光客が訪れている。

栗石で石畳みを作る   床の通気溝のしくみ   湯の花小屋をつくる   湯の花を採取する   青粘土の採取現場
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